いろいろな不適応問題の背景には、軽微な発達障害の問題が潜んでいることが多くあります。
「適応機制が」の働きの発達がうまくいかない原因は、さまざまにありますが、大きく分けると、生まれつき適機制の発達が遅い子(知的・発達障害)、適応機制の働かせ方が未獲得な子(情緒障害・生活障害)、適応機制が働いていたのに遣えなくなった子(病的障害)の三タイプになります。ここで挙げているタイプは、精神医学の概念とは少しちがった心理学の考え方の区分です。
知的・発達障害の問題は、知能検査を実施して、明確なエビデンスを元に判断しないと、正確に的確に精緻にできるものではありません。行動観察や、問診などでする、主観判断では、見えない能力の微細な特性は把握できるものではありません。ですから、教員や医師、保護者や関係者の、主観判断には、間違いが多くなります。
心理検査の実施は、いろいろな専門機関で簡単に受けられるようになりましたが、心理検査結果の解釈と所見は、よほど精通した専門家でないとできるものではなく、いい加減なものが横行しています。
心理検査の解釈と所見の難しさを概説すると、知能検査の実施は、マニュアルを読めば一般の人でも簡単に実施して結果が出せます。しかし、結果がでれば即判断ができるものではないのです。知能検査の結果は、単なるいろいろな問題を処理しただけのものです。だから、結果=知能にはなりません。その結果を出している知能の実体を論理推論して、具体的に描き出さなくてはならないのです。検査結果から知能の実体を論理推論する過程には、十分な心理学の専門的知識が必要で、これを持ち合わせていない人にはできません。
心理士の報告書であっても、検査結果については細々と書かれていても、それだけで、知能の実体の解釈や所見にまでに言及したものは、少ないものです。結果の報告だけでは、臨床には、ほとんど役立たないものです。
心理検査の結果は、受けた被験者の物です。だから、検査結果は、実施者と被験者とで情報共有できるものでなくてはならないはずです。病院で、血液検査やレントゲン検査をすれば、その結果は、必ず患者に知らせてくれますし、依頼があれば個人にもらえます。しかし、昔よりはオープンになっていますが、旧態依然として、実施側の勝手な理由で、心理検査結果の情報共有させてくれず、もらえず、他機関にも開示しないところが、まだあります。検査を受けるときには、事後の情報共有や開示の在り方を調べてから受ける必要があります。
子どもの不適応改善には、一般の養育に加えて療育対応が必須です。療育とは、普通ならそこまでする必要がないことを、微に入り細をうがつように丁寧に養育をすることを言います。普通の養育に療育を上乗せする感じのもので、どのような療育が、子どもに合っているのかを、検査の解釈や所見から導出します。
多くの子どもの不適応は、発達するにつて改善されます。子どもの発達を阻害しないように、そして、子どもが自身の持つ自然な発達力を十分に発揮して生きられるように、専門家とクライエントがタッグを組んで、共働作業でやっていくのが理想だと思います。