「自己実現」の思い2

「自己実現」の思い2

 不満焦燥怒り恐れ不安に悩みに苦しんでいる人の多くが「『(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう』なんてとても思えません」と言います。「今の自分には自信も気力も才覚も無いし、これからだって良くなるようには思えないし、良くなる兆しも無いし、むしろ悪くなるとしか思えず、そんな無い無い尽くしの思いばかりだから、とてもじゃないけど思えません」などとも言います。言っている本人は全く気づいていませんが、そのようにしか言えないことが、心身の失調による不適応状態になっている証拠です。なぜなら、心身の健康な人は、どんなに無い無い尽くしの思いばかりで、一時は落ち込んだり苛ついたりすることがあっても、必ず「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」という思いが創れるからです。「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」という思いが創れるかどうかが、心身の失調と健康とを分けるものです。

 心身の失調で「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」とは思えませんという人に、無い無い尽くしの思いがあっても、健康な人が思っているように「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」と思いを創るようにしましょうと言うと、これに対して十人が十人とも返す答えがあります。それは「無理です、だって、そう思えませんから」です。その通りです。思ってみることができないから不適応になっているので、思えるなら不適応にはなっていないのですから。健康な人から見れば「何をたわけたことを言っているんだ、やってみろと行動を無理に強要しているのじゃなく、心で思ってみるだけのことをしようということなのに、それがどうしてできないんだよ」と思うところです。でも、それができなくなるのが心の失調ですから、不適応の人が言うのがもっともです。ただ思ってみるだけのことでも、心身失調している人には、困難極まりない無いことです。思いを創る、思ってみることをする、というのは、想像以上に気力やエネルギーのいることです。ですから、不適応の人は、総じて思えないと言う傾向が顕著です。特にうつ病の人は、そろいにそろって、思いが創れない、創る気力が湧かないと訴えることが多いですが、そんなことが原因しているようです。

 適応の回復には、適応的二次意識の思いを、思ってみるだけのことをすればいいのですが、それができない、思えない、思いたくないという言う人は、回復は不能ということになります。

 しかし、前述の「言葉」と「思い」の相互作用を思い出してください。「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」と思ってみることができない、思えない、思いたくないというのは、そんな心境になれないということです。でも、言葉で句の文字として、「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」と言葉や句の文字を言ったり読んだり書いたり見たりしていると、その言葉や句の文字が、「(どんなことがあっても)これから良くなっていくだろう」という心境を呼び起こしてくれます。言葉を大切扱って、言葉から心情心境を知るという感じです。

 不適応で悩んでいる人が、自力でこんなことを試みることはまずありません。だって、思えない、思いたくない思いを、敢えて言ったり書いたり読んだりすることなど、まずしないでしょう。ですから、自然に「自己実現」の思い創りができるようになるまで、心の失調は長引きます。長引かせないためには、第二の自我といわれるセラピストやトレーナーの支援で、早期に思い創りができるようになるのが得策です。

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