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大草正信のコラム
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自然に思ってしまう思い
 前項で、心は二つの思いで働いていると述べましたが、その一つが、「自然に思ってしまう思い」です。蛇を見ると、多くの人が「キモイ」と思うようです。少数派ですが、「可愛い」と思う人もいますし、「何とも感じない」と思う人もいます。そう思っている人に、どうしてキモイと思うのか?どうして可愛いと思うのか?どうして何も感じないのか?と訊いても、にょろにょろしているからとか、丸い目しているからとか、感じる何もないからとか、そう思ってしまう蛇の特徴は言えても、その特徴があるとどうしてそう思うのかについては答えることができません。そう思ってしまうとしか答えようがありません。ある有名な小説家が、「ありゃあ、異様に長げーから怖えーんだ」と、愉快に明言したことがあります。一理ある答えです。心理学にゲシュタルト心理学という学派があり、この心理学では、整っていない形は、人間に不快感と緊張を誘発するという原理を説いています。それを知っていて、そう答えたのかとも思いますが、この答えも、蛇の特徴を言っているだけで、それを見るとキモイと思ってしまう答えにはなっていません。
 このように、人間は、外界、外在、環境、対象に対して、人それぞれにいろいろなことを自然に思ってしまいますが、なぜそう思うのかと問われても、わからないのです。嫌なものは嫌だし、面白いものは面白いし、どうでもいいものはどうでもいいと、自然に思ってしまうからとしか言い様がありません。自然に思ってしまうことに、原因も理由もないのです。否、そんなことはない、原因や理由はあるはずで、「何々だから、そう思うのだと」答える人もいますが、本当にそれが原因かどうかは検証できません。何々だからと原因や理由にあげるものは、外界、外在、環境、対象の特徴や特性について語っているだけで、それが在ると、どうしてそう思うのかにはやはり答えられないのです。
 そして、ある外界、外在、環境、対象に対して、あることを思うことは、個々人ですべて異なり、何一つ同じものはないのです。ピカソの絵を見て、「すばらしい」と思う人も「わけわかんない」と思ってしまう人もいて、同じ環境(絵)でも、自然に思ってしまうことは違います。共通しているかのように思えるものでも、すべて微妙に違っています。十人十色というのは、こんな個々人の思いの違いを言ったものです。落語の「饅頭怖い」や昔話の「たのきゅうの小判が怖い」などは、何をどう思おうが自由で、どう思ってしまっても変でもおかしいことでもないという原則を笑い話に仕立てたものです。自然に思ってしまう思いに対して、なぜそう思うのかについての原因や理由を探しても見つけることができませんから、心の理解は、ともかくそう思ってしまうということから始めなくてはならないのです。だから、何をどのように思ってしまっても、それはOKだと言うことです。Aという対象がBという決まった思いを思わせるということは、20世紀初頭に「恒常仮定の否定」として科学的に破棄されました。しかし、悪環境で育つ子どもは、悪い子になるといった恒常仮定の考え方は、専門家の中にも未だにまかり通っていて、本当に困ったものです。
 ある外界、外在、環境、対象に対して、あることを自然に思ってしまう思いを、一次的に自然に思ってしまう思いという意味で「一次意識の思い」と呼んでいます。一次意識の思いは、どんなことだって思っていいし、思ってはいけないものなどなく、すべて自分の思いなのですから、プラスでもマイナスでもダークサイドでも、毛嫌いせずに大切に扱い、自分は、外界、外在、環境、対象に対して、こんなことを思っているのだと知っていることが大事です。
 カウンセラーが「なぜ、そう思うのですか」とか「そう思うのは、どうしてですか」と訊くことは、まずありません。訊いてもわからないことを訊いてクライエントを困らせないようにする配慮だからです。カウンセラーが「そう思っているんですね、それで・・」などと対話を始めるのは、こんなことに基因しています。
 人は誰でも、不快な一次意識の不適応思いを思ってしまう原因や理由を知りたがります。原因や理由がわかれば、不適応思いが、消えて、無くなり、取り替えられるように思えるからです。悩みの種になる不満、怒り、嫌悪、怖れ、懐疑、懸念といった不適応思いは、自然に思ってしまう一次意識の思いですが、一次意識の不適応思いは、どんな思いがあってもいい、そんな風に思ってしまっていると自覚することから始めようとは、なかなか思えません。が、なかなか思えないというのも、一次意識の思いですから、そう思っていていいのです。一次意識の不適応思いを、なんとかすることに汲々としていても、していなくても、人間には、自力で思ってみることをして創る思いというものが在り、自分で自分の思いが創れるようになると、心が穏やかな健康になります。
[ 2012/10/09 ]
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